昨日はいろいろとあったな。
王様に呼ばれて、魔王を倒せと言われるわ、貰った剣には元魔王がいるわで……シルフィーネ村に向かう馬車に揺られながら昨日のことを思い出す。
あの後もゾルダにはこの世界のことを少し教えてもらった。
自分のステータスの見方も。「ステータス、オープン」
レベルは1、パラメータも特筆するものはない、スキルも特に今はない。
経験を積んでいけば何かは得られるのだろうか。 そういえば、ゾルダが言っていたな。~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ステータスの見方はわかったか? おぬしは特に現時点では何か凄い能力を持っていることはないようだな」よくある飛びぬけた能力を持って転移する話。
その期待をしていたが、不発に終わったようだ。 そう世の中うまくいかないよな。「なんだよ~。
よくある異世界転移の話だったら、チートスキルか能力があるはずなのになぁ……」ゾルダがキョトンとした顔でこちらを見る。
「なんじゃ、そのチーなんちゃらとか、異世界転移の話とかは……」
元の世界の話だから、通用しないのは当たり前か。
そこでゾルダに元の世界の流行りの話をしてみた。「あっ、こっちの話。
俺が元いた世界には、そういう作り話が流行っていて、 転移とか転生するとものすごい力や能力を持って、 無茶苦茶活躍するっていう話がいっぱいあってだな。 そのすごい力をチートって言っていたのでつい言葉が出てきた」感心した様子でうなづくゾルダ。
「そうなのか……
おぬしの元の世界も面白そうなところだのぅ。 頭に思い描いたものを話として世の中に広めていくのだから」こちらの世界には小説とか物語とはないのだろうか。
伝説という感じの話はありそうだけど。「まぁ、そういうことだ。
しかし、そう世の中、話のように上手くいかないな」俺は自分を納得させるように言い聞かせた。
「そういうことかもしれんのぅ……
おっ、そうだ、ちょっと待っておれ」ゾルダが俺の頭に手を当て、目をつむる。
「んっ……
でも、呼び出されただけのことはあるやもしれん」ゾルダは何かが見えたようにつぶやいた。
「それは、どういうこと?」
俺に何かがあるのか?
ちょっと期待してしまう。ゾルダは手を当てながら話を続ける。
「ワシは完全にではないが、素養というのを見ることが出来る。
ちょっと見たところだと、強くなっていく素養はありそうだぞ」今は能力を発揮できないってことか。
簡単に手に入るものではないのは、元の世界でも同じだ。「努力すればなんとかなるってことか……
せっかく異世界来たのなら、もっと楽できると良かったけどなぁ」頭から手を離したゾルダが、俺に向かってさらに話を続けた。
「今のままではおぬしに死なれてもワシが困る。
強くなるようにワシも手伝うから、絶対に死ぬなよ…… ワシはまだ元の力は出せないようだが、おぬしよりは強い力は出せるぞ。 ザコならこの剣を振れば一瞬で狩れるから、経験稼ぎにはなるはずじゃからのぅ」チート能力がなくても、楽に経験値を稼げるようならそれはそれでいいかもしれない。
「そこが楽できるならいいか」
楽観的に考えていこう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~素養ある分だけマシか。
努力すれば報われることが確定しているなら、努力のしようもあるもんだ。そうこうしていると、森の手前で馬車が止まった。
「大変申し訳ございませんが、ここから先は案内が出来ません」
案内役が怯えた様子で俺に話しかけてきた。
「なんで?」
理由もなしにそう言われても困ってしまう。
案内役にそう尋ねると、申し訳なさそうに答えてくれた。「ここ最近、通常より魔物が強くなってきたため、私どもはこの先に進むことが出来ません。
シルフィーネ村はこの森を抜けた小高い丘の上にあります」ここからは自力か。
経験も積まないといけないようだし、ちょうどいいか。 ゾルダも他の人がいると出ようにも出てこれないようだし。「わかった。
ここまででも案内してくれてありがとう。 ここからは、1人で行くよ」案内してくれた馬車に別れを告げて、森の中を進むことにした。
馬車は一目散に走っていった。 よっぽどこの先が怖いのだろう。馬車の姿が見えなくなると、ゾルダが顔を出してきた。
「たしかに、この森は少しばかりいつもと違うのぉ
ワシにはたいしたことないが、おぬしにはちょっとばかしきついかもな。 なに、ワシと一緒なら、大丈夫だ。 とにかく、先手必勝。受け身に回らずこちらから仕掛けていけよ」ゾルダは気楽なもんだな。
初めての実戦になるかもしれないので、ドキドキしているのに。「その時は頼むぞ、ゾルダ」
意を決して、森の中を進み始める。
しかし木々が生い茂り、陽の光もあまり差し込まない薄暗い森だ。 明らかに何か出そうな雰囲気がする。「肝試しをしているみたいだ」
少し葉が揺れ動くだけで、ビクッとする。
「何をそんなに怖がっているのじゃ」
脳内にゾルダの声がする。
もし強い魔物とか出てきたらどうするんだ。 怖がるのも普通だと思うのだが……「そりゃ、いつ何が出てくるかわからないし
警戒しながら歩いていれば、そうなるよ」ゾルダの声が頭に響く。
顔は見えないが、ニヤニヤしていそうな雰囲気は感じた。「そんなに怖がらなくても大丈夫じゃ。
ちょっと先にしか、魔物はいないぞ」索敵能力でもあるのか、ゾルダは。
「それがわかるなら、最初から教えてくれよ」
ゾルダに対して、ちょっと文句を言う。
「おぬしもわかっているもんだと思っていたわ。
この先に、数匹いるからな」この世界では常識なのか。
それともゾルダだけの能力なのか。 よくわからないが、あいつにはわかるらしい。 便利な能力だ。少し進むとそこには3匹のウォーウルフがいた。
剣を抜き構えると、ウォーウルフたちが一斉にこちらを向いた。「ウォーウルフか。
おぬしにはちょっと強いかもな」いきなり強い魔物が出てくるの?
RPGの定番じゃ……「そうなの?
最初だし、こういう時に出てくるのはスライムなんじゃないの?」そう、弱い敵をちまちまと倒してレベルアップする。
それがRPGの定番だろう。「さっきも言ったじゃろ、少しこの森は違うと。
そんな弱い物たちは、とうにこの辺りにはおらん」もういないということは元々は居たのだろうか。
でも現実で即死モード実装はないだろうと思う。「死にゲーじゃないんだから、初手から強いの出てこなくても……」
ため息をつきながら、自分の身の不幸に落胆する。
「ほら、そんなへっぴり腰じゃ、倒せるものも倒せんぞ。
大丈夫じゃから、剣が当たらなくても、ワシが力を増幅させてやるから、さっさと振れ」今はゾルダの言葉を信じるしかない。
「わかった」
不器用な構えから剣を横に懸命に振る。
剣からは、黒いオーラのようなものが立ち上り、振った先にいるウォーウルフたちに襲い掛かる。「ギャンッ!」
黒いオーラに包まれたウォーウルフたちは次々と倒れて消滅していく。
「な、一発じゃっただろ」
ドヤァという感じの声でゾルダが話しかけてきた。
「凄いな、ゾルダは……」
俺自身が弱いのはわかっているからこそ、心の底からそう思った。
「じゃろう、じゃろう、もっとワシを褒めろ!」
そういいながら、ゾルダは高笑いをする。
「それより、おぬし
おぬしより強いウォーウルフを倒したんじゃから、レベルが上がっているはずじゃ。 確認してみろ」忘れていた。
力が上がった感覚もないから、数値で確かめないと。「ステータス、オープン」
3匹倒しただけだったが、レベルが4つも上がっていた。
「なんか数字を見ただけで、少し強くなった気がするよ」
ちょっとだけだが、この世界でやっていけそうと思った。
「まだまだ序の口じゃ、さっさと進みながら、倒して行くぞ」
うなずくと、前を向き歩き始めた。
少し強くなれたし、これで少しは楽になるかな。 次はゾルダの力を借りずに自分の力で倒せれば。 そんなことを考えながら、森の中を歩きシルフィーネ村へ向かうのだった。さて…… ようやく外にも出れたし、さっさと封印の解き方を探さないとな。よくわからんのは、あやつがこの剣を握ったときは実体化が出来るようじゃが…… 完全に封印が解けている訳ではなさそうじゃ。 あやつが封印を解くカギやもしれん。 どうせまだこの剣からは出られんのだし、しばらくは同行するしかなさそうじゃ。あと、力も完全に出せている感じはしないのぅ。 さっきのあやつの戦いに使った力も、本来ならウォーウルフごときは姿形も残さないはずじゃがのう。 魔力を探知できる範囲も思ったより狭いな。 あやつがある程度強くなる前に強敵に出くわさないといいがのぅ。しかし、さっきの戦いは滑稽だったのぅ。 あやつがいた世界には剣も何もないのだろうか。 この世界は己の身は己で守らんといかんから、年端もいかない子供たちですら武器を使うことを教えられている。 あそこのなんとかっていう王もたぶんそれぐらいは出来ているだろうというところで訓練もせずに放り出したな。 これじゃ魔王を倒す前に、あやつが死ぬぞ。「ゾルダ、この先にはまださっきの狼みたいな怪物はいるのか?」ワシが考え事しているところだというのに、あやつは尋ねてくる。「はっきりと感じるだけでも、数十匹はおるようじゃ。 その先はもっとおるやもしれん」死なれては困るし、死なぬように教えておかんとな。「そんなにいるのか? いつになったら目的の村につくのやら……」あやつがため息交じりにつぶやいておる。 たかがウォーウルフごときで何をしておるのじゃ。「ほれ、そうこうしているうちに、すぐそこに1匹おるぞ」少しは自信を持ってもらわないとのぅ。 魔王のところまで行く前に、旅を辞めかねん。「さっき、レベルが上がって、スキルを覚えたじゃろ。 1匹だし、今度は手助けせんから、1人で戦ってみろ」1対1だし、なんとかなるじゃろ。 出来るかぎり手助けをせずに、強くなってもらわないとな。 こんなところでくたばりでもしたら、ワシの封印が解けないしの。 いざとなったら手助けはしてやるがな。「1人でか……」またボソッとあやつが独り言を言っておる。 相変わらず自信なさげじゃのぅ。「新しいスキル、新しいスキル…… これか。この【スピントルネード】ってやつは……」字のごとくそのままじゃろ。 何を深く考えてい
俺はアグリ。何故かこの世界で勇者となった。そして魔王討伐の旅に出ている。で、今はその旅の途中なのだが……「このワシに立てつくとはいい度胸しておるのぅ」容姿端麗で見た目は美しいが終始高圧的な態度の女性が、容赦なく敵を蹴散らしていく。「さすが、ねえさま。素晴らしいですわ」現代で言えばゴスロリ風というのだろうか……そういう服を着ている、まだ容姿としては幼い女の子がうっとりした目をしている。「おいどんにも残しておいてくだされ」強面で筋骨隆々ないでたちの男性が、肉体をこれ見よがしに見せながら敵をなぎ倒す。「もう少しスマートに出来ないものですかね。私のように」執事風ですらっとした体系の男性が、そう言いながら華麗に敵を倒していく。「暑いわ。いややわ。わっちの肌がヒリヒリしてきたわ」後方で素肌を眺めながらのんびりと構えている女性。出るところが出て、引っ込むところは引っ込む、所謂物凄くグラマラスな女性だ。そのスタイルがわかる姿は、目のやり場に困る感じだ。……と、なんだろう。この状況は。みんながみんなだいぶ好き勝手にやってくれている。「おい、お前ら! やりたい放題やって、さっきの話はどうなった?」終始高圧的な態度をしている女性が攻撃をやめて、睨みかえしてきた。「さっきの話とはなんじゃったかのぅ……忘れたぞ 目の前に敵がいるなら堂々と蹴散らすのみじゃ」なんでこう話を聞かないのか。「なぁ、ゾルダ。 敵を倒すのはいいんだけど、もっと自重しろっていったよな。 辺り一面火の海じゃん」終始高圧的な態度を示す女性の名はゾルダという。「これでもワシは自重しておるぞ。 周りが脆いだけじゃ」そしてこのゾルダ。実は元魔王である。「ゾルダの自重は自重になっていないんだって。 後々から言われるのは俺なんだからな」そう、勇者である俺のバディでもある。そして他の4人も元四天王でゾルダの部下である。今はこの5人と共に魔王討伐の旅に出ていたのだった。俺も何故元魔王たちと一緒にいるのか不思議だ。勇者には勇者の仲間がいるのが普通だが、今の俺の仲間と言えるのはこの元魔王と元四天王だ。勇者が元魔王の力を借りて現魔王を倒しに行く。自分で言っていても訳が分からない。それにこいつらは本当に元魔王だし、元四天王なのだ。魔族だし、人の常識にあてはめ
俺は岩城亜久里そこそこ働いて、そこそこ遊んで、そこそこの生活をして過ごしている。どこにでもいそうな普通のサラリーマンである。フツーが一番。目立つのは面倒である。今日も通勤電車に揺られながら出勤する。そして自分の役割だけはこなす。定時になったら、目立たぬようにそろっと帰る。人付き合いもそこそこで、深すぎず浅すぎずの友人関係や仕事関係を保っている。深入りしてトラブルになるのは避けたいんでね。社畜と言われるほど会社に奉公している訳でもないし、かといってちゃらんぽらんに仕事をしている訳ではない。ワークライフバランスっていうのかな。何でもバランスって大事よ。今日も与えられた任務完了して、さっさと家へ帰って筋トレして、風呂入ってから、ゲームでもするか。朝の通勤電車の中でそんなことを頭に思い浮かべながら出勤をしていった。~数日後の休日~昨日の夜に動画を見ていたら、海ではしゃいでいるシーンがふと目に留まった。まだ夏には早いけど、今日は休みだし、一人で海へ行ってみるか。愛車の軽自動車に最低限の荷物を積み、海へと向かう。そういえば、最近あまり遠出はしていなかったな。インドア派だし、そんなに外へ出なくてもね。家でゲームしたり、動画見て過ごせる。外に出る必要性は感じないけど、たまには外に出なくちゃね。窓を開けると海風が心地いい。しばらく走っていると足跡もない白い砂浜が見えてきて、テンションがあがった。近くに車を止めると、ビーサンに履き替えて、海へと突っ走っていく。「冷たっ」さすがに海の水は冷たく、思わず声が出てしまう。しばらく波打ち際を歩いていたが、少し先の海の中が一瞬何かが光ったように見えた。「なんだろう」光が気になり、その方向に近寄っていく。すると、潮の流れが急に早くなったのか、足が引っ張られる。片方の足で踏ん張ってはみるものの、引っ張る力は強く、なかなか抵抗が出来ない。みるみるうちに、海の中へ引きずり込まれてしまう。もがけばもがくほど苦しくなる。「もうダメかも。このまま死ぬのか……」そのまま意識が遠のいていった。はっと目が覚めると、そこは見覚えがない天井だった。周りを見回す。石で作られた壁や柱。天蓋付きのベッド。見たことがないものが並んでいる。ベッドから起き上がり、窓際に行く。閉まっていた窓を両手
………………………………ふと気がつくと、薄暗いところだった。周りには古めかしい鎧や兜、書物や宝石だろうか。そういったものが置かれている。……………………ここでワシは何しているんだ。身体を動かそうとするが、全く動かない。「ここはどこなんだ。 そういえば、ワシは何をしていたんだ」……………………たしか、ゼドがワシのところに来て、勇者を討伐したと勇者の剣や防具を持ってきたんだったかな。そして、その剣を鞘から抜いたら……その後、どうだったかな……ゼドの不敵な笑みだけは思い出せるが……そういえば、ここもワシが知らんところだ。そしてなんで身体が動かないのだ。ワシはどうなっているのだ。立っているような感覚はある。目も見えているようだ。キョロキョロと周りを見回す。左奥の方に光るものが見えたぞ。鏡だ。視線を鏡に向けてみた。?剣が映っているではないか。あれ?鏡はこっちを真っすぐ向いている。こっちはワシがいる方向だよな。??!!!!!「何じゃこりゃ」剣になっているではないか。そういえば……ゼドが持ってきた勇者の剣とやらを抜いた直後にまぶしい光が出てきて……あやつはワシを嵌めおったのか。あれは封印の光か。だからあんな笑みを浮かべていたのか。してやられた。四天王どもはどうなった。そういえばあの時に姿はなかったな。…………………………たしか剣と共に兜や鎧などもあったような。であれば、ワシと同じくそれらに封印されたのか。そうとしか考えられんな。あの時見た覚えがある兜などはここにはなさそうだ。となるとここにはいなさそうだ。周りの雰囲気からしてもここはワシの城ではないな。あとその時からどのくらい時が経っていたのかも分からんのぉ。今がどうなっているか、何かわかる手段はないのか。あちこち見回してみるが、手掛かりになりそうなものはなさそうだ。そうこうしているうちに、扉のカギを開ける音がした。「ガチャ」数名の兵士が扉を開けて入ってきて、灯りをつける。あれは人間どもだな。……ここは人間の支配する国か。兵士たちが話す声が聞こえてくる。「王様は何を持って来いと話されていたんだ」とある兵士が一緒にきた兵士に確認しているようじゃ。「確か、勇者に渡す武器や防具と仰っていたはずだが」確認
マリアについてくと、バカでかく煌びやかな扉の前に着いた。廊下の天井も高いし、扉も大きくて当たり前か。ここに王様がいるのだろうか。「勇者様を連れてまいりました」扉の前にたったマリアが近衛兵たちに話しかける。扉の前に立つ近衛兵が大きな扉の取っ手に手をかけ、扉を押す。そこには広い大きな間が広がっていた。奥の方のこれまた豪華な椅子に座っているのが、国王だろうか。国王の前につき、マリアが跪く。それと同時に、俺の方に目を送る。あっ、俺も同じことしないといけないのか。慌てて、俺も跪く。「勇者様がお目覚めになりました」マリアがそう告げると、国王が顔を崩す。「よく目覚めてくれた。私が国王のマルクス・アウレリウス八世である。 勇者をせっかく召喚したのに、このまま死んでしまうのではないかと思った」勝手に呼び出しておいて、勝手に殺されてしまったら、かなわない。「貴方が、国王が俺を呼び出したのか?」ちょっとムキになり大声で国王に話しかけた。そして、つっかかるように話す。「正確に言うと呼び出したのは私ではない ただ、私が命令して、召喚の儀式をしてもらったのだ」俺の様子に多少ひるんだのか、弱弱しい声で国王が答える。「勝手に呼び出されて、勇者と言われても困るんだが……」さらにつっかかる俺。国王が困った顔をして話し始める。「確かにそれはわかるが、こちらとしても事情があってな」今の状況を長々と説明しはじめた。纏めるとまず、前任の勇者が150年前に魔王を追い詰めたが、討ち取るまでには至らなかった。勇者たちは深手を負って帰還。その後、しばらくは平和になった。ただ、最近になり魔王軍が攻め込んで来るようになった。魔王に対抗する手段は、この世界にはない。異なる世界から勇者を呼び出すしかない。前任の勇者もそうだった。ということらしい。勝手に呼び出されて、魔王と戦えと言われてもな。でも戻る手段はなさそう。覚悟を決めるしかなさそうだ。「事情はわかった。 こうなった以上は仕方ないのかな…… で、この後はどうすればいいんだ」その言葉を聞いた国王の顔がほころぶ。「そうか。引き受けてくれるか。よかったよかった。 では早速だが、シルフィーネ村に向かってほしい。 魔物が増えてきているとの報告がある。 そこの状況確認と魔王に関する情報を
よし。うまく抜け出せたようだ。しかし、あやつは良くワシを選んでくれたな。なんだか力も少し出てきたような感じだ。「でかしたぞ。よくワシを選んでくれた」とあやつに声をかけてみた。そのまま、ちょっと力を入れてみた。すると、剣の外へ向かって体が流れていく感じがした。「んっ……」なんか首が動く。下も向ける手も動かせるぞ。脚もある。「これは……剣から出られたのかのぉ…… もしや封印が解けたのか?」独り言のようにつぶやいた。そしてワシの目の前には剣を持ったまま固まっているあやつがおる。目を丸くしてこちらを見ている。「何をそんなにこちらを見ておる」あっけにとられた顔をしておるあやつが、深呼吸して話し始めた。「………… おっ……お前は……だっ……誰だ!?」まぁ、ビックリするよのぅ。このワシですらビックリしておるのじゃから。「ワシか? ワシはソフィ……んっうん……ゾルダだ」あやうくソフィアというとろこだった。この名前はどうも魔王らしくなくて困る。改めてワシは言い直した。「魔王のゾルダだ」魔王と聞いてさらに驚いた様子のあやつ。なんとも言えん顔をしておるのぅ。「まっ……魔王!? さっき王様が話していた復活した魔王のこと!?」さらに驚いたのか、剣を離して床に落としよった。今度は剣の中に体が吸い込まれる感覚に襲われる。ふと見ると、天井だけが見えていた。どうやら剣にまた閉じ込められたようだ。封印が完全に解けている訳ではなさそうだ。「おい、おぬし! その剣を持て!」声が聞こえたのか慌ててあやつが剣を持つ。するとまた体が流れていく感じがした。すると、また動けるようになった。どうやらあやつが剣を持っている間だけ、外に出れるようだ。また出てきたワシにビックリしているようだ。「なんで魔王がここにいるんだ?」あやつが慌ててワシに問いただしてきた。…………おっと、そういえば今は魔王ではなかったな。「あそこでじじいが話していた魔王はゼドのことじゃ。 言うなれば、ワシは元魔王ってところじゃな」あやつはまだ状況を理解できておらんようじゃ。ワシへの確認を続けておる。「元魔王? 元だろうが前だろうかよくわからないけど…… で、その元魔王が何故にここに?」そう言われても、ワシも困るのじゃが……適当に話をし
さて…… ようやく外にも出れたし、さっさと封印の解き方を探さないとな。よくわからんのは、あやつがこの剣を握ったときは実体化が出来るようじゃが…… 完全に封印が解けている訳ではなさそうじゃ。 あやつが封印を解くカギやもしれん。 どうせまだこの剣からは出られんのだし、しばらくは同行するしかなさそうじゃ。あと、力も完全に出せている感じはしないのぅ。 さっきのあやつの戦いに使った力も、本来ならウォーウルフごときは姿形も残さないはずじゃがのう。 魔力を探知できる範囲も思ったより狭いな。 あやつがある程度強くなる前に強敵に出くわさないといいがのぅ。しかし、さっきの戦いは滑稽だったのぅ。 あやつがいた世界には剣も何もないのだろうか。 この世界は己の身は己で守らんといかんから、年端もいかない子供たちですら武器を使うことを教えられている。 あそこのなんとかっていう王もたぶんそれぐらいは出来ているだろうというところで訓練もせずに放り出したな。 これじゃ魔王を倒す前に、あやつが死ぬぞ。「ゾルダ、この先にはまださっきの狼みたいな怪物はいるのか?」ワシが考え事しているところだというのに、あやつは尋ねてくる。「はっきりと感じるだけでも、数十匹はおるようじゃ。 その先はもっとおるやもしれん」死なれては困るし、死なぬように教えておかんとな。「そんなにいるのか? いつになったら目的の村につくのやら……」あやつがため息交じりにつぶやいておる。 たかがウォーウルフごときで何をしておるのじゃ。「ほれ、そうこうしているうちに、すぐそこに1匹おるぞ」少しは自信を持ってもらわないとのぅ。 魔王のところまで行く前に、旅を辞めかねん。「さっき、レベルが上がって、スキルを覚えたじゃろ。 1匹だし、今度は手助けせんから、1人で戦ってみろ」1対1だし、なんとかなるじゃろ。 出来るかぎり手助けをせずに、強くなってもらわないとな。 こんなところでくたばりでもしたら、ワシの封印が解けないしの。 いざとなったら手助けはしてやるがな。「1人でか……」またボソッとあやつが独り言を言っておる。 相変わらず自信なさげじゃのぅ。「新しいスキル、新しいスキル…… これか。この【スピントルネード】ってやつは……」字のごとくそのままじゃろ。 何を深く考えてい
昨日はいろいろとあったな。王様に呼ばれて、魔王を倒せと言われるわ、貰った剣には元魔王がいるわで……シルフィーネ村に向かう馬車に揺られながら昨日のことを思い出す。あの後もゾルダにはこの世界のことを少し教えてもらった。自分のステータスの見方も。「ステータス、オープン」レベルは1、パラメータも特筆するものはない、スキルも特に今はない。経験を積んでいけば何かは得られるのだろうか。そういえば、ゾルダが言っていたな。~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~「ステータスの見方はわかったか? おぬしは特に現時点では何か凄い能力を持っていることはないようだな」よくある飛びぬけた能力を持って転移する話。その期待をしていたが、不発に終わったようだ。そう世の中うまくいかないよな。「なんだよ~。 よくある異世界転移の話だったら、チートスキルか能力があるはずなのになぁ……」ゾルダがキョトンとした顔でこちらを見る。「なんじゃ、そのチーなんちゃらとか、異世界転移の話とかは……」元の世界の話だから、通用しないのは当たり前か。そこでゾルダに元の世界の流行りの話をしてみた。「あっ、こっちの話。 俺が元いた世界には、そういう作り話が流行っていて、 転移とか転生するとものすごい力や能力を持って、 無茶苦茶活躍するっていう話がいっぱいあってだな。 そのすごい力をチートって言っていたのでつい言葉が出てきた」感心した様子でうなづくゾルダ。「そうなのか…… おぬしの元の世界も面白そうなところだのぅ。 頭に思い描いたものを話として世の中に広めていくのだから」こちらの世界には小説とか物語とはないのだろうか。伝説という感じの話はありそうだけど。「まぁ、そういうことだ。 しかし、そう世の中、話のように上手くいかないな」俺は自分を納得させるように言い聞かせた。「そういうことかもしれんのぅ…… おっ、そうだ、ちょっと待っておれ」ゾルダが俺の頭に手を当て、目をつむる。「んっ…… でも、呼び出されただけのことはあるやもしれん」ゾルダは何かが見えたようにつぶやいた。「それは、どういうこと?」俺に何かがあるのか?ちょっと期待してしまう。ゾルダは手を当てながら話を続ける。「ワシは完全にではないが、素養というのを見る
よし。うまく抜け出せたようだ。しかし、あやつは良くワシを選んでくれたな。なんだか力も少し出てきたような感じだ。「でかしたぞ。よくワシを選んでくれた」とあやつに声をかけてみた。そのまま、ちょっと力を入れてみた。すると、剣の外へ向かって体が流れていく感じがした。「んっ……」なんか首が動く。下も向ける手も動かせるぞ。脚もある。「これは……剣から出られたのかのぉ…… もしや封印が解けたのか?」独り言のようにつぶやいた。そしてワシの目の前には剣を持ったまま固まっているあやつがおる。目を丸くしてこちらを見ている。「何をそんなにこちらを見ておる」あっけにとられた顔をしておるあやつが、深呼吸して話し始めた。「………… おっ……お前は……だっ……誰だ!?」まぁ、ビックリするよのぅ。このワシですらビックリしておるのじゃから。「ワシか? ワシはソフィ……んっうん……ゾルダだ」あやうくソフィアというとろこだった。この名前はどうも魔王らしくなくて困る。改めてワシは言い直した。「魔王のゾルダだ」魔王と聞いてさらに驚いた様子のあやつ。なんとも言えん顔をしておるのぅ。「まっ……魔王!? さっき王様が話していた復活した魔王のこと!?」さらに驚いたのか、剣を離して床に落としよった。今度は剣の中に体が吸い込まれる感覚に襲われる。ふと見ると、天井だけが見えていた。どうやら剣にまた閉じ込められたようだ。封印が完全に解けている訳ではなさそうだ。「おい、おぬし! その剣を持て!」声が聞こえたのか慌ててあやつが剣を持つ。するとまた体が流れていく感じがした。すると、また動けるようになった。どうやらあやつが剣を持っている間だけ、外に出れるようだ。また出てきたワシにビックリしているようだ。「なんで魔王がここにいるんだ?」あやつが慌ててワシに問いただしてきた。…………おっと、そういえば今は魔王ではなかったな。「あそこでじじいが話していた魔王はゼドのことじゃ。 言うなれば、ワシは元魔王ってところじゃな」あやつはまだ状況を理解できておらんようじゃ。ワシへの確認を続けておる。「元魔王? 元だろうが前だろうかよくわからないけど…… で、その元魔王が何故にここに?」そう言われても、ワシも困るのじゃが……適当に話をし
マリアについてくと、バカでかく煌びやかな扉の前に着いた。廊下の天井も高いし、扉も大きくて当たり前か。ここに王様がいるのだろうか。「勇者様を連れてまいりました」扉の前にたったマリアが近衛兵たちに話しかける。扉の前に立つ近衛兵が大きな扉の取っ手に手をかけ、扉を押す。そこには広い大きな間が広がっていた。奥の方のこれまた豪華な椅子に座っているのが、国王だろうか。国王の前につき、マリアが跪く。それと同時に、俺の方に目を送る。あっ、俺も同じことしないといけないのか。慌てて、俺も跪く。「勇者様がお目覚めになりました」マリアがそう告げると、国王が顔を崩す。「よく目覚めてくれた。私が国王のマルクス・アウレリウス八世である。 勇者をせっかく召喚したのに、このまま死んでしまうのではないかと思った」勝手に呼び出しておいて、勝手に殺されてしまったら、かなわない。「貴方が、国王が俺を呼び出したのか?」ちょっとムキになり大声で国王に話しかけた。そして、つっかかるように話す。「正確に言うと呼び出したのは私ではない ただ、私が命令して、召喚の儀式をしてもらったのだ」俺の様子に多少ひるんだのか、弱弱しい声で国王が答える。「勝手に呼び出されて、勇者と言われても困るんだが……」さらにつっかかる俺。国王が困った顔をして話し始める。「確かにそれはわかるが、こちらとしても事情があってな」今の状況を長々と説明しはじめた。纏めるとまず、前任の勇者が150年前に魔王を追い詰めたが、討ち取るまでには至らなかった。勇者たちは深手を負って帰還。その後、しばらくは平和になった。ただ、最近になり魔王軍が攻め込んで来るようになった。魔王に対抗する手段は、この世界にはない。異なる世界から勇者を呼び出すしかない。前任の勇者もそうだった。ということらしい。勝手に呼び出されて、魔王と戦えと言われてもな。でも戻る手段はなさそう。覚悟を決めるしかなさそうだ。「事情はわかった。 こうなった以上は仕方ないのかな…… で、この後はどうすればいいんだ」その言葉を聞いた国王の顔がほころぶ。「そうか。引き受けてくれるか。よかったよかった。 では早速だが、シルフィーネ村に向かってほしい。 魔物が増えてきているとの報告がある。 そこの状況確認と魔王に関する情報を
………………………………ふと気がつくと、薄暗いところだった。周りには古めかしい鎧や兜、書物や宝石だろうか。そういったものが置かれている。……………………ここでワシは何しているんだ。身体を動かそうとするが、全く動かない。「ここはどこなんだ。 そういえば、ワシは何をしていたんだ」……………………たしか、ゼドがワシのところに来て、勇者を討伐したと勇者の剣や防具を持ってきたんだったかな。そして、その剣を鞘から抜いたら……その後、どうだったかな……ゼドの不敵な笑みだけは思い出せるが……そういえば、ここもワシが知らんところだ。そしてなんで身体が動かないのだ。ワシはどうなっているのだ。立っているような感覚はある。目も見えているようだ。キョロキョロと周りを見回す。左奥の方に光るものが見えたぞ。鏡だ。視線を鏡に向けてみた。?剣が映っているではないか。あれ?鏡はこっちを真っすぐ向いている。こっちはワシがいる方向だよな。??!!!!!「何じゃこりゃ」剣になっているではないか。そういえば……ゼドが持ってきた勇者の剣とやらを抜いた直後にまぶしい光が出てきて……あやつはワシを嵌めおったのか。あれは封印の光か。だからあんな笑みを浮かべていたのか。してやられた。四天王どもはどうなった。そういえばあの時に姿はなかったな。…………………………たしか剣と共に兜や鎧などもあったような。であれば、ワシと同じくそれらに封印されたのか。そうとしか考えられんな。あの時見た覚えがある兜などはここにはなさそうだ。となるとここにはいなさそうだ。周りの雰囲気からしてもここはワシの城ではないな。あとその時からどのくらい時が経っていたのかも分からんのぉ。今がどうなっているか、何かわかる手段はないのか。あちこち見回してみるが、手掛かりになりそうなものはなさそうだ。そうこうしているうちに、扉のカギを開ける音がした。「ガチャ」数名の兵士が扉を開けて入ってきて、灯りをつける。あれは人間どもだな。……ここは人間の支配する国か。兵士たちが話す声が聞こえてくる。「王様は何を持って来いと話されていたんだ」とある兵士が一緒にきた兵士に確認しているようじゃ。「確か、勇者に渡す武器や防具と仰っていたはずだが」確認
俺は岩城亜久里そこそこ働いて、そこそこ遊んで、そこそこの生活をして過ごしている。どこにでもいそうな普通のサラリーマンである。フツーが一番。目立つのは面倒である。今日も通勤電車に揺られながら出勤する。そして自分の役割だけはこなす。定時になったら、目立たぬようにそろっと帰る。人付き合いもそこそこで、深すぎず浅すぎずの友人関係や仕事関係を保っている。深入りしてトラブルになるのは避けたいんでね。社畜と言われるほど会社に奉公している訳でもないし、かといってちゃらんぽらんに仕事をしている訳ではない。ワークライフバランスっていうのかな。何でもバランスって大事よ。今日も与えられた任務完了して、さっさと家へ帰って筋トレして、風呂入ってから、ゲームでもするか。朝の通勤電車の中でそんなことを頭に思い浮かべながら出勤をしていった。~数日後の休日~昨日の夜に動画を見ていたら、海ではしゃいでいるシーンがふと目に留まった。まだ夏には早いけど、今日は休みだし、一人で海へ行ってみるか。愛車の軽自動車に最低限の荷物を積み、海へと向かう。そういえば、最近あまり遠出はしていなかったな。インドア派だし、そんなに外へ出なくてもね。家でゲームしたり、動画見て過ごせる。外に出る必要性は感じないけど、たまには外に出なくちゃね。窓を開けると海風が心地いい。しばらく走っていると足跡もない白い砂浜が見えてきて、テンションがあがった。近くに車を止めると、ビーサンに履き替えて、海へと突っ走っていく。「冷たっ」さすがに海の水は冷たく、思わず声が出てしまう。しばらく波打ち際を歩いていたが、少し先の海の中が一瞬何かが光ったように見えた。「なんだろう」光が気になり、その方向に近寄っていく。すると、潮の流れが急に早くなったのか、足が引っ張られる。片方の足で踏ん張ってはみるものの、引っ張る力は強く、なかなか抵抗が出来ない。みるみるうちに、海の中へ引きずり込まれてしまう。もがけばもがくほど苦しくなる。「もうダメかも。このまま死ぬのか……」そのまま意識が遠のいていった。はっと目が覚めると、そこは見覚えがない天井だった。周りを見回す。石で作られた壁や柱。天蓋付きのベッド。見たことがないものが並んでいる。ベッドから起き上がり、窓際に行く。閉まっていた窓を両手
俺はアグリ。何故かこの世界で勇者となった。そして魔王討伐の旅に出ている。で、今はその旅の途中なのだが……「このワシに立てつくとはいい度胸しておるのぅ」容姿端麗で見た目は美しいが終始高圧的な態度の女性が、容赦なく敵を蹴散らしていく。「さすが、ねえさま。素晴らしいですわ」現代で言えばゴスロリ風というのだろうか……そういう服を着ている、まだ容姿としては幼い女の子がうっとりした目をしている。「おいどんにも残しておいてくだされ」強面で筋骨隆々ないでたちの男性が、肉体をこれ見よがしに見せながら敵をなぎ倒す。「もう少しスマートに出来ないものですかね。私のように」執事風ですらっとした体系の男性が、そう言いながら華麗に敵を倒していく。「暑いわ。いややわ。わっちの肌がヒリヒリしてきたわ」後方で素肌を眺めながらのんびりと構えている女性。出るところが出て、引っ込むところは引っ込む、所謂物凄くグラマラスな女性だ。そのスタイルがわかる姿は、目のやり場に困る感じだ。……と、なんだろう。この状況は。みんながみんなだいぶ好き勝手にやってくれている。「おい、お前ら! やりたい放題やって、さっきの話はどうなった?」終始高圧的な態度をしている女性が攻撃をやめて、睨みかえしてきた。「さっきの話とはなんじゃったかのぅ……忘れたぞ 目の前に敵がいるなら堂々と蹴散らすのみじゃ」なんでこう話を聞かないのか。「なぁ、ゾルダ。 敵を倒すのはいいんだけど、もっと自重しろっていったよな。 辺り一面火の海じゃん」終始高圧的な態度を示す女性の名はゾルダという。「これでもワシは自重しておるぞ。 周りが脆いだけじゃ」そしてこのゾルダ。実は元魔王である。「ゾルダの自重は自重になっていないんだって。 後々から言われるのは俺なんだからな」そう、勇者である俺のバディでもある。そして他の4人も元四天王でゾルダの部下である。今はこの5人と共に魔王討伐の旅に出ていたのだった。俺も何故元魔王たちと一緒にいるのか不思議だ。勇者には勇者の仲間がいるのが普通だが、今の俺の仲間と言えるのはこの元魔王と元四天王だ。勇者が元魔王の力を借りて現魔王を倒しに行く。自分で言っていても訳が分からない。それにこいつらは本当に元魔王だし、元四天王なのだ。魔族だし、人の常識にあてはめ